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笹幸恵
2017.12.7 01:17

「師匠」の恋愛観

恋愛、不倫、別れ、こういう話になると、

私の脳内では突然「師匠」が出てくる。

師匠とは、作家・宇野千代。

以前、記事にもしたことがあるのだけど、

彼女の恋愛遍歴はものすごい。

というかムチャクチャ。

もちろん自分がフラれることもあるし、

かと思えばあっさり夫を棄てたりするし、

とにかく倫理観なんてそこには微塵もない。

相手の男性も結構ムチャクチャ。

 

で、彼女はいくつもの年輪を刻んで、言うのである。

 

男と女が別れるとき、一方が別れたいと思っているのに、

その相手は別れたくないと思っている。

そういう構図で騒ぐのが常だ。

けれど本当にそうだろうか。

本当は、相手だって同じように思っている。

口に出す勇気がないだけだ、と。

 

男たちが去っていったとき、

果たしてひとりになりたいという気持ちが

自分に微塵もなかったか。

 

別に心当たりがあるわけでもないのに、

この視点は、何だか私にはとても新鮮だった。

「別れたくないのにフラれた」とか、

「夫を寝取った相手の女が許せない」とか、

悲劇のヒロイン話が当時まわりに溢れていたからかな。

ウンザリするほどに。

 

私は宇野千代の熱心な読者ではありません。

けれど、誰に何と言われようと

自分の意思と愛を尊重し、

それと同じくらい相手の意思と愛を尊重した、

そこに自立した女の強さを見ます。

 

何が言いたいかって?

別れる男と女の問題は、当事者の数だけ

それぞれに事情がある。

それは他人には計り知れない。

当事者の自立した意思の問題でしかない。

にもかかわらず、赤の他人が正しいだの間違っているだの、

どっちが加害者でどっちが被害者だの、

言い募ること自体が無粋だということ。

 

少しも艶っぽくない。

もはや誰も、宇野千代の妖艶さを知らないの?

 

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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