恋愛、不倫、別れ、こういう話になると、
私の脳内では突然「師匠」が出てくる。
師匠とは、作家・宇野千代。
以前、記事にもしたことがあるのだけど、
彼女の恋愛遍歴はものすごい。
というかムチャクチャ。
もちろん自分がフラれることもあるし、
かと思えばあっさり夫を棄てたりするし、
とにかく倫理観なんてそこには微塵もない。
相手の男性も結構ムチャクチャ。
で、彼女はいくつもの年輪を刻んで、言うのである。
男と女が別れるとき、一方が別れたいと思っているのに、
その相手は別れたくないと思っている。
そういう構図で騒ぐのが常だ。
けれど本当にそうだろうか。
本当は、相手だって同じように思っている。
口に出す勇気がないだけだ、と。
男たちが去っていったとき、
果たしてひとりになりたいという気持ちが
自分に微塵もなかったか。
別に心当たりがあるわけでもないのに、
この視点は、何だか私にはとても新鮮だった。
「別れたくないのにフラれた」とか、
「夫を寝取った相手の女が許せない」とか、
悲劇のヒロイン話が当時まわりに溢れていたからかな。
ウンザリするほどに。
私は宇野千代の熱心な読者ではありません。
けれど、誰に何と言われようと
自分の意思と愛を尊重し、
それと同じくらい相手の意思と愛を尊重した、
そこに自立した女の強さを見ます。
何が言いたいかって?
別れる男と女の問題は、当事者の数だけ
それぞれに事情がある。
それは他人には計り知れない。
当事者の自立した意思の問題でしかない。
にもかかわらず、赤の他人が正しいだの間違っているだの、
どっちが加害者でどっちが被害者だの、
言い募ること自体が無粋だということ。
少しも艶っぽくない。
もはや誰も、宇野千代の妖艶さを知らないの?